【本の感想】トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ

【本の感想】トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ
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久しぶりに、ダイエットの話を・・2019年7月に発売された本「トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ」の感想です。

トロント在住の医師「ジェイソン・ファン」は、腎臓病の専門医です。末期腎不全の原因疾患としては、慢性糸球体腎炎や腎硬化症などがありますが、欧米においても一番多いのが「糖尿病性腎症」です。

著者は糖尿病性腎症の患者さんの治療をしていくなかで、予防的食事法が何よりも大切であることに気付きます。そしてⅡ型糖尿病予防に最適なダイエット(食事療法)に行きつくのです。

トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ

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私がこの本を買おうと思ったのは「タンパク質食材を食べたときにも、インスリンは(かなりの量が)分泌される」事実が詳しく書かれていたからでした。

タンパク質食材を食べてもインスリンは分泌されるのであれば「糖質制限をしても膵臓を休ませることにはならない」ですよね。もちろん糖質を大量に摂る事に比べれば体への負担は軽く済みますので糖質制限に意義はあると思ってはいますが・・

さて、前置きが長くなりましたが、早速この本の内容や率直な感想を書かせていただきます。

この本の概要

著者は腎臓の専門医で、腎不全の一番の原因となる糖尿病治療のための食事療法に取り組んでいることは冒頭に書いたとおりです。

この医師も当初はインスリンを投与し一般的なカロリー制限法を指導していたそうですが、それでは糖尿病のコントロールが上手くいかずダイエットにも成功しないことに気付きます。そこで様々な論文を読んで試行錯誤した結果、世に出回っているダイエット法の間違いに気づいたのだそうです。

著者の主張は、肥満の原因はインスリン分泌にあり、7割がた遺伝的な要因で決められてしまっていること、そして残りの3割をコントロールするにはどうすればいいのか、が書かれています。

読むのに非常に苦労した本でもありました。その理由は、見出しと本文の内容が合っていないものが見られること、矛盾した主張があること、著者の言っていることが推測なのか根拠に基づいたものなのか明確になっていない箇所があったので理解するのに時間がかかったからです。主張を肉付けするための研究結果の引用が多すぎることも関係しています。

この本が提案している方法論にも疑問が残りました。それについては後程書きたいと思います。まずは本書の中で注目したものをピックアップしてみました。

「痩せたかったら食べるのをやめなさい」

最初からこの本の要旨を書いてしまいまいます。著者(腎臓内科の医師)が言いたいのは

「痩せたかったら(やたらに)食べるのをやめなさい」

この一言のようでした。具体的な方法論として「プチ断食」を勧めています。なぜ断食かといえば「肥満ホルモンであるインスリンをできるだけ出さないようにするため」なのです。インスリンは糖質摂取の時だけでなくタンパク質食材を食べた時にも分泌されます。これらの事実を踏まえて

「糖質制限をしたとしても、のべつまくなく食べていたら痩せるはずないじゃん」というのが著者の主張なのです。

現在のダイエット業界は「ダイエットしたいなら、しっかり食べなさい」と指導するのが主流です。

「食事制限をやりすぎると代謝が落ちてリバウンドをするから」というのが理由です。

でも、日本で盛んに言われている「食べなさい」的な指導を著者は否定しています。「1日5食ダイエット」に代表されるような「ちょこちょこ食べ」こそⅡ型糖尿病の温床であり、ダイエットの敵であると主張しているのです。「ちょこちょこ食べ」は、インスリンを分泌させることになります。そのため、肥満の元になるだけでなく膵臓を疲れさせてしまうからです。

何を食べるかより食べない時間を増やす方が重要

本の中では避けるべき食べ物として精製糖質を筆頭に上げています。また、炭水化物に関しては「食べても良い」と書いてあるかと思えば、摂り過ぎは良くないと書かれている箇所もあり一定していませんでした。全体を通しては「炭水化物の割合が多いのはお勧めできない」との考えのようでした。

ここまで読むと糖質制限と大差ないように思えますね。しかし「どんなものを食べてもインスリンを分泌させる結果となる(純粋な脂質を除く)」ことから、タンパク質の摂り過ぎにも警鐘を鳴らしています。ここが糖質制限と違う点です。

何を食べるかも重要だが「食べない時間を増やす事の方がより重要」ということになるようです。

重要な食べ物は食物繊維と良質の油

食べる物の質を良くすることも大切であると書かれています。人工的に作られたものではなく自然のもの、繊維の多いもの、丸ごと食べられる食材です。またバターやアボカド、オメガ3やオリーブ油などの良質な油はインスリン分泌がほとんどなく、身体にとっても重要なので積極的に摂るように勧めています。

膵臓は特に酸化ストレスに弱いと言われています。質の良い食べ物を取り人工的な食べ物は避けること、喫煙も含め体に悪い物は控えることは大切なことでしょう。

タンパク質摂取でもインスリンは分泌される

本の中で一番参考になったのがこの部分です。鶏のささみだけ食べてもインスリンは分泌されているという事実は、だいぶ前から確認されていたようです。ささみを食べても血糖値は上がりませんが、インスリンは分泌されるため、肥満の原因にはなり得ます。

タンパク質の中でもインスリンを分泌させやすいのが牛乳やお肉で、なかでも牛乳のインスリン分泌量はパン以上だったことが実験の結果分かったのだそうです。

食べ物を見ただけで肥満になる?

さらに興味深かったのは、食べ物を見ただけでインスリンが分泌される可能性があることでした。

美味しそうな食べ物の匂いを嗅いだり見たりすると急に空腹を感じることはありませんか?

五感から感じる刺激だけでも胃液は分泌されます。食べ物を食べると、胃からはインスリン分泌を増加させる「インクレチン」というホルモンが分泌されます。胃に食物が到達するかなり前からインスリン値は上がることが確認されているそうです。

また、人工甘味料もインスリンを分泌させるため、人工甘味料入りの炭酸を飲んだりガムを噛んだりしてもインスリンは出てしまいます。人工甘味料は血糖値を上げませんが、インスリンを分泌させることから肥満やインスリン抵抗性の原因になり得るでしょう。

ストレスも肥満の原因になる

ストレスを感じるとコルチゾールというホルモンを出して対応します。コルチゾールは血糖値を上げるため、インスリン分泌を促す結果になります。長年会社勤めをしていた方が引退しストレスから解放されると自然に痩せることがありますが、ストレスと肥満も大いに関係があると言えるでしょう。

私が感じた疑問点や感想

最後に、この本を読んで私が感じた疑問点や感想を書きます。

本書が勧める食事法は日本人にはそぐわないかもしれない。

糖尿病は1型と2型があるのはご存知だと思いますが、2型に関しては更に大きく二つに分かれるようです。「インスリンが正常に分泌されるタイプ」と「インスリンの分泌能力が低いタイプ」です。

欧米人は前者の「インスリンが正常に分泌されるタイプ」が多く、それ故に肥満になりやすくインスリン抵抗性によって糖尿病になってしまいます。一方、日本人に多いのは後者の「インスリンの分泌能力が低いタイプ」です。

欧米タイプの方には、タンパク質の過剰摂取にも気を配りインスリン分泌を減らすこの方法はあっていると思いますが、日本人に多いやせ型の糖尿病体質の方にはこの方法だけで改善はしないかもしれません。

日本人に多い糖尿病体質の方はそもそもインスリンが出にくいので、太れないタイプです。しかし、身体の内部では血糖値の急上昇による様々な悪影響を受けています。

したがって、欧米の方のようにプチ断食をして、ひたすらインスリンを出さないようにすることも大事ですが、それ以外のアプローチ・・たとえば筋トレでぶどう糖の取り込みを良くすること、タンパク質もしっかり取って筋肉をつけること、酸化ストレスを防ぎ、抗酸化物質を補給して膵臓のベータ細胞を守ること、亜鉛やマグネシウムなどのサプリメントなども活用し、インスリン分泌の改善を促すことなども必要かと思われます。(本当に改善するかどうかは、保証できません)

また、最近は腸内細菌叢によって同じ糖質でも血糖の上昇の仕方が違うことも分かってきていますので血糖値が上がりにくい物を選定して食べることも大切だと思います。

断食しても筋肉は減らないと書かれているが・・

疑問だったのは本の中で「断食しても筋肉は減らず脂肪から減っていく」と断言していたことです。断食すると筋肉から減少するので、リバウンドをしやすいと私は認識していました。実際に断食道場などの施設でも断食の後はリバウンドをします、と但し書きがあります。

しかし、本の中で筋肉が減る事はない・・と断言している割には根拠が一切書いておらず信ぴょう性に欠けると思ってしまいました。朝を抜くプチ断食ぐらいなら試す価値ありですが、本の内容を真に受けて断食しすぎてしまうとリバウンドをする可能性はある、と思います。

乳製品を勧めている根拠が薄い

前述したとおり、この本の肝はたとえタンパク質でも(食べ物を口にいれれば)インスリンが出る事実が書かれていることです。特にお肉や牛乳などの動物性タンパク質はダントツでインスリン分泌を促す、と書いてあるにもかかわらず「乳製品だったら太らない」と言い切っています。

その理由を探しても明確な答えは見つからず、赤身肉を食べて太ってしまった研究結果と共に「乳製品はお肉と違って食べすぎることがないから」と考察していました。それだけの理由で乳製品なら大丈夫と結論づけるのは早急すぎるかなと感じました。

お腹が空いたら食べるようにする-これは賛成

最後に、この本で最も評価できるたのは、三食神話や子供への間食の必要性を否定していることです。著者は「お腹が空いたら食べること」を提案しています。もちろん高齢の方や低栄養の方は別ですが、健康な方やお腹周りが気になる方は無理に3食食べることもないでしょう。

まとめ-ちょこちょこ食いは肥満のもと

肥満の方に限って「食べないでいること」がとてもつらいようですが、少しづつ空腹感に慣れるようにしていくといいかもしれません。太りやすい体質の方や物心ついたときから肥満だった・・という方は、実践するには勇気と根気が必要ですが大変参考になると思います。