第197回 肉に偏る糖質制限で不足する栄養素は?
- 2016.08.01
- 糖質制限 食事
- カルシウム, カルシウムとリンの比, ビタミンD, マグネシウム, 牛乳の害, 糖質制限とサプリメント, 糖質制限と海藻, 糖質制限と魚, 肉食と骨粗鬆症, 肉食危険, 脱灰
糖質さえ摂らなければよいと思う間違い
恥ずかしながら、私は糖質制限を始めた頃、
「糖質さえ摂らなければ何を食べても良い」
と考えていました。
チーズは小腹が空いた時に制限なく食べ
ナッツは植物油と食塩を使用した物を好んで
食べていました。
魚は、ほぼ食べず、牛肉は安全な国産物は高いので
豚か鶏がメインでした。
外食のとんかつ、から揚げも良く食べていました
(衣は半分はがしていましたが)
つまり以前の糖質制限では前回のブログに書いた
「リノール酸」の割合が多く、特に高温で熱した油や
酸化油を多く摂っていたんですね。
さすがにトランス脂肪酸は避けていましたが、
それだけでは駄目でした。
結果、アレルギーが更に酷くなりました。
NGな糖質制限の見本ですね。
(NGな糖質制限は、他にもありますが、それはまた別の機会に。)
では、油だけ気を付ければいいかと言えばそうではないんですよね。
今日は肉に偏る糖質制限で不足する栄養素についてです。
高蛋白質食は、カルシウムが少なく、リンが過剰になりやすい。
まず、最初は肉だけでなく魚、卵も含め高蛋白質の食事を
する際の注意点です。
肉と魚は蛋白質豊富で亜鉛や鉄などのミネラルも多いのですが、
カルシウム(ca)が少なくリン(p)が多いのが難点です。
厚生労働省 「日本人の食事摂取基準」(2010年版)によると
血中Ca濃度が低下すると副甲状腺ホルモンの分泌増加により
骨からカルシウムが溶け出します。
副甲状腺ホルモンが高い状態が続くと、骨の粗鬆化を引き起こす
とされています。
研究によると
〇Ca/P比0.26では副甲状腺ホルモンは上昇
(骨からカルシウムが溶ける可能性がある)
〇Ca/P比0.58では副甲状腺ホルモンは正常→2016年8月2日追記
〇Ca/P比0.74以上ではそれ以下に比べ骨密度は有意に高かった。
・・・そうです。
Ca/P比は1に近い方がいいのですが高タンパク質食では、
比が小さくなりがちです。
例えば
肉で約150㎎のリン、
魚で約250㎎のリン
・・が含まれています。
一方、カルシウムは少なく
肉は3~5㎎、魚は20~30㎎です。
それぞれの比を見てみると
〇肉 Ca(5):P(150)=0.03
〇魚 Ca(20):P(250)=0.08
・・となり、魚の方がCaの割合は高いものの、
両者とも低Ca高Pになっています。
ハムやベーコンなど肉の加工品に含まれるリンは
もっと高くなります。更に塩蔵品に含まれるナトリウムは
カルシウムを排泄させてしまいます。
こういった理由からも加工品は避けた方が良いですね。
いずれにしても
肉や魚だけの単品摂取を続けると骨が弱くなる
可能性がある、と私は思います。
ただ、過剰なリンと骨粗鬆症との関係は、
まだ研究段階で決着はついていないそうで、
必ずしも高蛋白質食だけが骨を弱くする原因
とは限りません。
骨の代謝に関わるホルモン分泌は
個人差が大きく、
日頃から筋肉運動をしているか
など他の要因も関係していると思われます。
…………………………………
さて、話は逸れましたが、リンとバランスを
摂るために必要なのはカルシウムです。
カルシウムの多い物と言えば乳製品です。
牛乳のカルシウムは100gで110㎎あり
吸収率も高いです(約5割。魚は3割程度)
従ってカルシウムの補給には乳製品は適当です。
では、乳製品を沢山食べて、
カルシウムを補えばよいかというと、
それだけは不足してしまうものがあります。
それは、マグネシウムとビタミンDです。
現代人は不足しがちなマグネシウム
精製穀物や加工食品のマグネシウム含有量は少なく、
その一方で、ストレスやアルコールの過剰摂取により、
マグネシウムはカルシウムと共に多く排泄されています。
現代人は日常的にマグネシウム不足になっている
可能性があるのです。
カルシウムとマグネシウムの摂取比率は
2:1程度が理想とされていますが
乳製品やお肉にはマグネシウムはほぼ含まれていないので、
肉や乳製品に偏ると、カルシウムとマグネシウムの比は
10:1程度まで開いてしまいます。
高カルシウム、低マグネシウムになればなるほど、
虚血性心疾患のリスクが高くなることは昔から指摘されており、
カルシウムだけ過剰に摂るのは避けた方がよいと思います。
また、マグネシウムは糖代謝にも大きく関与し、
インスリンの作用を増強させる働きもしています。
糖尿病治療や予防のためにもマグネシウムは
十分に摂る必要がありますね。
ちなみにマグネシウムは魚やわかめなどの
海産物に多く含まれます。それらも意識的に
摂取したほうがよいです。
骨吸収に必要なビタミンD
ビタミンDは腸管でのカルシウム吸収に、
なくてはらなない栄養素です。
牛乳や肉には、ほんのわずかしか含まれていないので、
乳製品と肉だけ食べていてはビタミンDは十分に
摂れません。その結果、骨が弱くなる可能性が
あります。
ビタミンDは鮭などの魚に多いので魚の摂取は
必要です。
まとめ
1、糖質制限食はリンの過剰摂取、カルシウム不足になりやすい。
2、カルシウムは乳製品で摂れるが、肉や乳製品に偏ると
マグネシウムとのバランスが悪くなり、ビタミンDも不足する。
3、偏った食事で虚血性心疾患や骨粗鬆症になる可能性がある。
4、糖質制限は肉や乳製品だけでなく、魚、海藻、大豆、
リンが少なくカルシウムが豊富な野菜も合わせて摂った方が良い。
5、それが難しい場合は、サプリメントも検討する。
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