第202回 完璧すぎる紫外線対策は免疫力を低下させる。

第202回 完璧すぎる紫外線対策は免疫力を低下させる。
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今日はビタミンDについてです。

ビタミンDは、カルシウム、ビタミンK、マグネシウムと
共に骨粗鬆症予防に必要なビタミンとして知られています。

しかし、近年はそれ以外に、免疫力強化、糖尿病、高血圧、
自己免疫疾患、一部の癌(大腸がん、前立腺がん、乳がんなど)
への有効性が認められつつあり海外でも注目されています。

ビタミンDの取り入れ方

ビタミンD摂取の方法は二つあります。

日光に当たる

ビタミンDは、紫外線(UVB)を浴びると体内で生成されます。

ただし、ガラス越しや衣服の上からの照射では駄目で、
皮膚に直接浴びる必要があります。

国立研究開発法人 国立環境研究所
「太陽紫外線による健康のためのビタミンD生成と
皮膚への有害性評価」

・・・によると、

400IU(10㎍)のビタミンD合成をするには

7月で6分間
12月で41分間

の直射日光を浴びると良いそうです。

※つくばの場合
※スキンタイプⅢ(日本人に多い肌)で顔と両手の甲に
直射日光を浴びた時。

6分程度なら肌にも悪影響を起こしません。
ビタミンD合成のために、夏の洗濯物干しは、
ノーメイクで行うのはどうでしょうか・・・?

食品から摂取する

ビタミンDは魚、きのこ類、卵に含まれます。
鮭(紅さけ、しろさけなど)の含有量が多く
1切れ(約100g)で約1570IU(39㎍)のビタミンDが摂れます。

ビタミンDには主にビタミンD3とD2があります。魚などに含まれる
動物性にはD3が、キノコなどの植物性に含まれるのはD2です。

D3の方がD2より2倍以上作用が強いと言われています。どちらかと
言えば、お魚から取る方がいいですね。

主な食品中のビタミンD含有量(1食分)
※クリックで拡大します。

vitamind

ビタミンDの必要量はどれぐらい?

ビタミンDの食品からの推奨摂取量は40~50代で600IU(15㎍)となっています。

しかし、これは健常者が骨の健康と正常なカルシウム代謝を
維持するために最低限必要な量で、

ビタミンDの別の効果(免疫力強化、糖尿病、癌予防)
の恩恵を受けるには、もっと多い量が必要と言われています。

予防医学におけるビタミンDの研究では

ビタミンD1200IU/日摂取でインフルエンザA型の罹患率が下がった

ビタミンD2000IU/日摂取でⅠ型糖尿病発症リスクを88%抑制した。
(フィンランド乳幼児10,000人を対象の研究)

などの報告があるようです。わざわざ予防接種をしなくても
ビタミンDを摂れば、インフルエンザに罹らずに済むかもしれません。

ビタミンDと血中濃度

ただ、ビタミンDは体内でも生成されるので、
食品と合わせて、どれだけ体内に取り込まれているか正確には把握できません。

そこで、栄養療法を取り入れている医療機関では血中のビタミンD濃度を
測定し病気の予防や治療のための栄養指導に役立てています。

ビタミンDは、
肝臓で25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)に変換されます。次に

主に腎臓内で活性型1.25-ジヒドロキシビタミンD(1,25(OH)2D)になります。

正確な体内のビタミンD血中濃度を把握するには、

肝臓で変換されたビタミンD「血清(25(OH)D濃度」
を測る事が必要で

保険適応の活性型のビタミンD:「血清1,25(OH)2D濃度」
では半減期が15時間と短いので、ビタミンDの指標にはなりません。

※血清25(OH)D濃度を測るのは現在のところ自費になります。

完璧な紫外線対策より、緩い紫外線対策を!

ビタミンDが骨粗鬆症だけでなく、病気の予防になるのなら
完璧すぎる紫外線対策は控えた方が良いかもしれません。

厚生労働省「統合医療に係る情報発信等推進事業

統合医療情報サイト ビタミンD
http://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/17.html

によると

SPF8以上の日焼け止め剤は紫外線を遮断するように
考えられているが、実際には、十分量を塗付していない、
日光に当たる部位に塗り残しがある、
定期的な塗り直しをしていない等により、
日焼け止め剤で皮膚を保護している場合でも
一般的な塗り方であればビタミンD合成が行われることが多い 。

のだそうです。

ところが、今は美白の為に顔だけでなく手足や首まで完璧に
紫外線対策をしたり、日中の外出を避けてしまう人がいます。

それだと、ビタミンD合成の恩恵を受けられません。

そうは言っても真夏に紫外線対策をせず出かける事は
したくないですよね。過剰な日焼けは肌に良くありませんし。

従って、これからは日焼け止めを出かける前に塗って、
マメに塗りなおさなくても良しとするような

ちょっとずぼらな紫外線対策にしておくと
免疫力アップのためにいいのかもしれません。

また、毎日日光浴をしなくても、余分に作られた分は
体内に蓄積されるので、ある程度の期間は賄われます。

秋冬は日光浴だけではビタミンDは不足する。

ただし、夏の間に日光でせっせとビタミンDを生成していても、
紫外線の届きにくい秋冬は蓄積分が失われ血中濃度は下がります。

その場合は、食事でのビタミンD摂取を心がけなければいけません。

表にあるような魚を食べれば、最低で約400IU
卵2個で80IU
40分程度の日光浴(つくばの場合)で400IU、

・・・合わせて900〜1000IU程度は摂れますが

秋冬の場合は、かなり意識しないと、ビタミンDを十分量摂るのは大変なんです。

キノコ類のビタミンDについて。

きのこ類はエルゴステロールという成分が紫外線に当たってビタミンD2に変化します。

工場栽培の場合、紫外線照射をしないとビタミンD効果はそれほど見込めないようです。

ただし、出荷の際のわずかな光や、蛍光灯の微量の
紫外線の影響により多少はD2が含まれているようです。

キノコでビタミンDが摂りたい場合は購入後、直射日光に当てるとD2が増えるそうです。

尚、原木栽培のシイタケや、キノコ類は
震災から5年経った今でも放射性物質が検出されています。

個人的な意見としては産地を選ぶか、控える方が無難だと思います。

参考サイト

ウィキペディア(ビタミンD)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3D

オーソモレキュラー.jp ビタミンD
http://www.orthomolecular.jp/nutrition/vitamin_d/

統合医療情報サイト ビタミンD

国際オーソモレキュラー医学会ニュース
http://www.iv-therapy.jp/omns/news/21.html

国立研究開発法人 国立環境研究所
「太陽紫外線による健康のためのビタミンD生成と皮膚への有害性評価https://www.nies.go.jp/whatsnew/2014/20141127/20141127.html

紫外線照射による各種キノコ中のビタミン D2含量に関する研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej1987/41/5/41_5_401/_pdf