対話が人の心を癒す-オープンダイアローグを読んだ感想

対話が人の心を癒す-オープンダイアローグを読んだ感想
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オープンダイアローグについて書かれている2冊の書籍を読みました。今日はその感想を書こうと思います。

私が読んだのは、森川すいめい先生の「感じるオープンダイアローグ」と、斎藤環先生の「オープンダイアローグとは何か」です。お二人とも精神科医として患者さんの診療をされています。

感じるオープンダイアローグ」は、オープンダイアローグを感覚的に掴んでもらう事に主眼を置いて書かれています。森川先生のお人柄が伝わる流れある内容で読みやすかったです。

オープンダイアローグとは何か」は、オープンダイアローグの論文を紹介する形となっています。オープンダイアローグの概念について分かりやすく説明されており、失敗例も載っているため医療従事者には大変参考になると思います。

薬物治療より心理療法を優先

オープンダイアローグは、フィンランド発の精神療法(心理療法)の一つ。患者さんと家族、複数人のスタッフによるグループで行う対話です。

もとは統合失調症の患者さん向けの治療でしたが、現在は他の精神疾患にも活用されています。しかし、残念ながら日本ではこれを実践している病院はまだまだ少ないようです。

統合失調症は薬物による治療がメインです。しかし、長年この方法を実践しているフィンランドの病院では薬物の中止や減薬、入院患者が大幅に減るなど目に見える効果があり、エビデンスも揃っているとのこと。

したがって、ここの病院では、薬物は2次的な治療として位置づけられ必要最小限の処方しかされないそうです。

オープンダイアローグとは?

「オープンダイアローグって、特別な方法なの?単に医師やスタッフが患者と話すだけじゃないの?」と思いますよね。でも、違うんです。詳しくは本を読んでもらいたいのですが、Wikipediaによればオープンダイアローグの特徴は以下となっています。

  • 本人抜きではいかなる決定もなされない。
  • 依頼があったら24時間以内に、本人・家族をまじえて初回ミーティングを開く。
  • 治療対象は最重度の統合失調症を含む、あらゆる精神障害をもつ人。
  • 薬はできるだけ使わない。
  • 危機が解消するまで、毎日でも対話をする。
  • テーマは事前に準備しない。スタッフ限定のミーティングなどもない。
  • もちろん幻覚妄想についても突っ込んで話す。
  • 本人の目の前で専門家チームが話し合う「リフレクティング」がポイント。
  • 治療チームは、クライアントの発言すべてに応答する。

フィンランドでは保険診療が認められており、急性期の患者さんや家族から連絡を受けたらなるべく早く会って話を聞くそうです。話し合い(オープンダイアローグ)は、10回~12回ほど行われます。

1回の時間は区切りますが、明日も同じスタッフに来てもらえること、安心して話ができること。それだけで、急性期の症状が治まる事が多いのだそうです。

ポイントは、患者さんの話を遮ったり「そんなことはあり得ない」「それは幻聴だと思うよ」などど決めつけないこと。早急に結論を出したり、間違いに気づかせよう、としないことも大切なのだそうです。

話の結論は必ずしも必要でなく、不完全なまま終わることもしばしばある。患者さんも家族もそしてスタッフも、このような白でも黒でもない「不確実性」を受け入れ、患者さんの心の世界を見つめます。

幻聴や幻覚を深堀りすると、妄想がエスカレートしてしまうのでは?と心配になる方もいると思いますが、そうはならないようです。

スタッフは、聞き役に徹するだけではなく、自分の感じたことをきちんと言葉にして伝えます。対等な言葉のやり取りをしていくうちに不思議な場の化学反応が起こる。そして患者さんの心は落ち着いていき幻聴幻覚が減る、、、

、、、読むだけでは、掴みどころのない、非科学的な治療に思えますよね。しかし、斎藤先生曰く、精神医学を専門にする医師なら「これで効果が出ないはずはない」と思ってしまうほど、論理的に正しいやり方なのだそうです。

ただ、患者さんに心を開いて話をしてもらうのは、信頼関係がないと難しいです。1対1ではなく、何人ものスタッフや家族の中で自分の心の内を話すのは、相当な勇気がいるかもしれません。

森川先生はオープンダイアローグ発祥のケロプダス病院まで研修を受けに行ったそうですが、この病院のスタッフは事前に受けた研修によってお互いの価値観を理解し尊重し、居心地の良い人間関係を築いていたそうです。

治療者と患者の区別はあるものの、上下はなく。医師も他の医療スタッフも同じ立場で話をする。相手を否定せず理解しようとする。このような対話の姿勢があってこそ、いい結果が出るのでしょうか。

認知行動療法とオープンダイアローグの違い

認知行動療法は日本でも保険診療が認められているスタンダードな精神療法です。神経症、うつ病、パニック障害などに用いられます。オープンダイアローグは対話がメインですが、認知行動療法は内観、独白(モノローグ)に近いように思えます。

うつ病になりやすい人は、「考え方の癖」があります。たとえば、細かいことが気になってしまったり、悪い方に捉えてしまうなど。

認知行動療法では、そのような心の癖に自分で気づき、違った視点(反証という)で考えられるようになることを目指します。大野裕先生が監修している自分で出来る認知行動療法のサイトがありますが、私も人間関係で悩んだ時などによくやっていました。

ただ、うつ病になりやすい人は、もともと内観が得意な人です。そういう人ほど、内観や反証をするより、オープンダイアローグで自分の気持ちを外にどんどん出す方がいいのではないかと思いました。

人の心を癒すのは「対話」

人は対人関係で悩み、時として心まで病むことがあります。しかし、オープンダイアローグを読んで、病んだ人の心を癒すのはやっぱり「人」なんだと感じました。特に「対話」の場が大切なんですね。

コロナ禍は人との交流を大幅に減らしてしまいました。会話による感染の恐怖はぬぐえず、疑心暗鬼になってしまう。生活苦からコロナ鬱になる人も多いようです。でも、そういう時こそ対話が必要のように感じます。オープンダイアローグ的な発想で人と関わるようにするだけで、癒される人もいるのではないでしょうか。

余談ですが「栄養療法(分子整合栄養医学)」も、精神疾患を持つ患者さんの治療が原点となっています。原因を見極めた上でしっかりした治療を行えばメンタルの不調は改善します。しかし、いくら体調を整えてもストレスフルな環境があれば治りにくいです。

食事や運動などの生活習慣と並行してオープンダイアローグが日本の精神医療に浸透すれば、向精神科薬による副作用や離脱症状で苦しむ人が減るのでは?何よりも精神疾患を持つ患者さんに対する偏見がなくなることを期待したいですね。