第227回 がんでは死なないがん患者 本の感想
- 2018.08.10
- 食事
がん闘病中の父親の栄養について調べていたところ
この本を知りました。2年前に出版された本です。
闘病中の方、栄養に関心のある方はすでにご存知とは思いますが
私は初めてこの本を読み得る事が多かったので感想を少しだけ・・
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がん患者さんが亡くなる原因は
著者の東口高志先生
(藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座教授)
は日本で初めてNST(栄養サポートチーム)をたちあげた方です。
NSTとは治療効果を上げ退院後も患者さんの生活の質を
落とさないよう院内の様々な職種(医師、栄養士、看護師など)
が連携し患者の栄養サポートを行っていく役割を担っています。
ガン患者さんは8割がガンそのものではなく感染症で亡くなるのだそうです。
その原因になっているのは栄養障害です。
適切な栄養管理がされずに栄養障害に陥りその結果免疫力が落ちて
感染症にかかりやすくなってしまうのです。
がん患者さんは治療の副作用で食欲が低下しますし、ガン細胞に栄養を奪われるなどで栄養障害が起こりやすい。しかし医療者が栄養状態を評価し医療行為として適切な栄養療法を行えば治療効果も生活の質も上ります。
そうすれば患者さんは本来起こす必要のない感染で苦しむ事もなく高齢者であれば寿命で人生を終える事も可能です。
しかし医療者の「栄養管理は医療行為」という認識はまだ希薄です。
患者さんに対する食事のアドバイスは
「栄養のある物をしっかり食べてください」
「食べられる物をたべて下さい」
「食欲がないときは無理しなくていいです」
など、漠然とした内容にとどまる事がほとんどです。
これでは患者は何をどれだけ食べるべきなのか
具体的な事が分からないし栄養は治療の基本だよ、
という一番大切な事も伝わりません。
特に患者さんは家族より医師や専門家に言われた方が
言う事を聞く傾向があるので、薬の処方と同じ感覚で
栄養処方(経腸栄養剤やサプリメントも含む)をした方が
栄養に関する意識は高くなると思います。
今はNSTの診療報酬も認められているため大病院には
ほぼNSTはあるようですが、患者が多すぎるせいか?
必要な患者全員には行き渡っていない印象を受けますね。
またガン患者さんの中には民間療法を行う方も大勢いますが
中には効果に疑問府が付くものもあります。
しかし医療者による正しい栄養管理が出来ていれば
怪しげな民間療法に頼らなくても十分に治療効果は上がる
と思います。これからもっと栄養サポートが認知されて
広まる事を期待したいと思います。
親を介護状態にさせない生活習慣
働き盛りの世代が介護のために休職や離職に追い込まれる問題が
深刻化しています。
この本には高齢者の低栄養の特色が具体的に書いてあるので
親の介護問題に直面する前にぜひ読んでおくといいと思います。
自力で生活できなくなる要因には低栄養による運動機能の障害などの要因が
大きく絡んでくるからです。
生活の幅が狭まって活動量が減ってしまうと老人性のうつや認知症の原因にも
なります。高齢者の低栄養をどうやって防ぐかは介護状態を減らすための
大きなポイントなんですよね。
また本の中ではよく議論される胃瘻の問題にも触れています。
嚥下障害が起きる原因は神経や筋肉の疾患や脳卒中などがありますが、
高齢者は栄養障害のために嚥下機能が損なわれている場合があって、
その場合は胃瘻で栄養状態が改善されれば(嚥下訓練も同時に行う)
口から食べられるようになる事もあるのだとか。
高齢者を胃瘻で生かすのは止めるべき、という意見は多くありますが、
口から食べる為の胃瘻造設という視点は目から鱗でした。
終末期の栄養管理
これは私が一番知りたかった内容でした。
ガンの最終段階になると栄養や水分が吸収できなくなりますが、
回復可能な「飢餓」と回復不可能な「悪液質」が混同されているケースが
多くて見極めは慎重に行う必要があるそうです。
悪液質にも段階があり診断基準はまだ明確になっておらず
個人差もあるようなのでしばらく議論は続きそうですね。
いずれにしても医療者は「癌に栄養を与えるのは良くない」といった
誤った考えは捨てて
人生の質を左右する栄養管理の大切さをきちんと学んだ方がよさそうです。
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